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Sunoco Redfox

バイクのエンジンオイルの作用について

2018年11月2日
著者: 矢内 洋三

エンジンオイルの6つの役割

エンジンオイルは、大きく6つの役割がある。

緩衝
エンジン内の部品は面ないし点接触しているが、かかるストレスを分散、軽減している効果。
防錆
エンジン内の空気や吹き抜け(ブローオフ)などにより構成部品に錆が発生しないようにする効果。
清浄
エンジン内のスラッジを取り込みクリーニングする効果。
密封
シリンダーとピストンの間にあるわずかな隙間を油膜で塞ぎ、燃焼室の機密性を保持する効果。
減摩
エンジン内の部品同士の接触により摩擦が発生する。その摩擦抵抗を減少させる効果。
冷却
エンジン内を循環することで、熱を構成部品から回収する効果。近年のエンジンでは噴射潤滑が主流になり、より条件が過酷になっている。

この6つの役割の効果が高いほど、良いエンジンオイルとなる。

エンジンオイルの特性を決める要因

エンジンオイルの特性を決めるのは、以下の要因がある。

エンジンオイルの製法により、性能が違ってくるのは当然だが、製法と同じ位に重要なのは粘度指数だ。
粘度指数を(かなり強引だが)わかりやすく言い換えると「油膜の厚さ」だ。

一番よく使われているオイルの粘度指数は10w-40だ。
理由としてはどんな気筒数や排気量でもとりあえずオイルとしての仕事をしてくれるからだ、と考える。
(カワサキのすべてのマシンは10w-40の設定でエンジン開発をしている、と開発者の弁)

だが、車種によっては10w-40では役不足で、カムシャフトにカジリが発生したケースもあるため、絶対ではない。
(メーカー推奨のオイル粘度指数でも、エンジンにダメージが発生する場合もある。)

粘度指数がオイルの油膜の厚さなので、当然油膜が薄い(粘度指数が低い)ほどエンジン内の保護効果は低くなるが、流動抵抗が抑えられるためエンジンレスポンスは向上する。
ロードレーサーのオイル粘度指数が低いのは、最低限のエンジン保護性能と高ポテンシャルを発揮するためであり、これを公道マシンで同じ事をするのは非常にリスクが高いといえる。
(MotoGPマシンのオイル粘度指数は0w-5だそうだが、オイル油膜に関するトラブルが一番発生するカムシャフトがないニューマチックバルブ方式の吸排気システムだからギリギリの粘度指数なのだと思われる)

オフロードレースでいえば、ダカールラリーの中継を見ていたのだが、マラソンステージにてライダーが自分のマシンのオイル交換をしていた。
確かマシンはKTMだったと思うが、その時のオイルはモチュール300Vオフロードの15w-60だった。
450ccといえど、過酷な環境でリタイヤが許されないレースではそこまで粘度指数の高いオイルを使う。

エンジンオイルの入れ替えによるリスクの低い手軽なチューニング

ひとつ、確実に言えるのは「エンジンオイルは一番手近なチューニング方法」という事だ。

エンジンオイルによって、リスクを低く抑えつつ、自分の好みの特性にマシンをチューニング(調律)する事が可能だ。
正しく行えば、エンジンの寿命を延ばす事にも繋がる。
すぐに変化がわかる上に、エンジンオイルが合わなければ、入れ替えるだけでだいたい元に復帰できる。

こんなに手近なバイクのチューニング方法が他にあるだろうか?

オイルの特性が変わる、という事はエンジン特性が変わるという事だ。
入れるオイルによってエンジン特性が高回転型やトルク型が変化する。
エンジンの年式や構造、加工精度、交換前に入っていたエンジンオイル、添加剤などの相性により、エンジンオイルのミスマッチが起こる。
正直なところ、エンジンオイルがそのバイクに適合するかどうかは、入れてみないとわからない。

クラッチやシフトチェンジのフィーリングも当然変化するため、エンジンオイルがバイクに適合しているかどうかの判断はユーザーの感性に左右される。
また、エンジンオイルの適合基準もユーザーの感性によるところが大きい為、エンジンオイルの感想は、あくまでそのユーザの一意見と思うくらいがちょうどいい。
自分の用途や好みの特性、マシンのキャラクターなどを考慮しないと、ただの消耗品の交換にしかならない。

だから、コストだけでオイルを選定するのはもったいない。
自分の感性に合うチューニング結果をもたらしてくれるエンジンオイルを探し求めるべきだ。

自分のマシンにマッチしたエンジンオイルにたどり着くために、自分で様々なオイルを交換して試していくのもひとつのバイクライフの楽しみ方ではある。
「エンジンオイルのソムリエ」と言える、オイルの研究し続けているメカニックに任せる事で、自分の好みに合う未知のワインと出逢うように、自分のバイクに合うエンジンオイルに出逢う事ができる。
そんなプロのメカニックによるエンジンオイルとの出逢いで、マシンと深く付き合っていける。

私は、上述のように、メカニックは「エンジンオイルのソムリエ」たるように研鑽をし続けなければならないと考えている。


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