Moto. Maintenance Garage

〒554-0022
大阪市此花区春日出中二丁目18番20号
Tel: 06-6225-7287
営業時間: 11:00〜20:00
定休日: 毎週木曜日

バイクのエンジンオイルの交換

バイクのエンジンオイル交換について

2018年9月30日
著者: 矢内 洋三

4ストロークエンジンにおいて、エンジンオイルは血液に相当する

血液が流れることでエネルギーが身体中をめぐり、代謝物を回収して体調の維持に務めるように、エンジンオイルもエンジン中をめぐり、潤滑しながら熱やスラッジを回収していくことで徐々に(条件によっては急激に)劣化する。
人体の血液ならば腎臓により血液のコンディションは保たれるが、エンジンオイルではそうはいかない。
オイルフィルター(オイルエレメント)が濾過するから大丈夫、などと言う人もいるが、劣化し変質してしまったオイルは濾過しても回復は決してしない。

オイル量は、正常なエンジンであれば必ず減少する。

オイル減少の原因は主に以下のものがある。

オイル消費はエンジン形式(単気筒なのかマルチなのか、DOHC・SOHC・OHV)や排気量、ボアストローク、使用方法や走行距離などで変化し、例えば同じ125㏄スクーターの単気筒エンジンでも、PCXとシグナスX、V125ではオイル消費量は全然違う。

適正な状態とオイル量での潤滑が行われないと、当然、重大なエンジントラブルが発生する。
人間でいえば、どろどろの血液で貧血になって倒れても点滴で回復するが、エンジンにおいてはどろどろのオイルでさらにオイル量が必要量以下になりエンジンが止まった場合、エンジンブローとなる。
人間でいえば心停止、確実な死が待っている。

オイル交換すればエンジントラブルを100%防げるか、といわれれば必ずしもそうではないが、交換しなければ100%起こる。
だからオイル交換が必要なのだ。

オイル交換時に求められる事

「オイル交換を自分でやってみよう」とか「オイル交換はスタッフでも若手の作業」と思っている人は多い。
実際、作業の難易度は低いので敷居は低く感じてしまう。

オイル交換は古いオイルを抜いて、新しいオイルを入れるだけの作業と思っている人にこう問いたい。
「自分が人工透析するとしたら、専門知識がない人にしてもらいたいですか?」

オイル交換は、人間に喩えると、人工透析だ。
人工透析は、専門スタッフが設備が完備された場所で行う命に関わる医療行為だ。

古いモノを抜いて新しいモノに入れ替える(実際の透析は濾過された血液だが)という行為でみれば、オイル交換も同じだ。
人工透析を行う時、必ず抜いた血液の状態を確認する。
エンジンオイルも同じだ。

抜いたオイルの汚れ、粘度、抜けた量、臭いなど、今までどんなコンディションでバイクが走ってきたか、その情報が集約されている。
その情報を正しく読み取る事が出来てこそ、「当たり前のオイル交換」といえる。

オイル交換において大事な事は、正確な作業は当然として

  1. 視覚:抜けたオイルの色や量
  2. 嗅覚:抜けたオイルの臭い
  3. 触覚:抜けたオイルの粘度

からどれだけ情報を読み解けるかにある。
その情報を読み解くには知識、経験、直感が必要になってくる。

そこまで考えてオイル交換をしている人は稀だ。
多くの人は、ただコストの事か、良くて自分のバイクをメンテナンスする喜びの為だろう。
正直な話、DIYでも作業として間違えなければ壊れる事は「今のところ」そうそうないだろう。

しかし、「これからの」高効率エンジンは、使用状況やエミッション対策などにより、昔のバイクほどアバウトなメンテナンスを許容できないだろう。

作業においての注意点

古いオイルを抜いて、新しいオイルを入れる。
言葉にすればそれだけだが、作業するにおいて注意する点は多々ある。

  1. 必ず最初に外す部品はフィラーであること。(オイルの注ぎ口を開けておく)
  2. ドレンボルトからオイルが抜けきったあと、エンジンを始動したりして必要以上にオイルを抜こうとしないこと。
  3. エアクリーナーボックス内にもブローバイで溜まったエンジンオイルが存在する。エアクリーナーボックス下にあるドレンキャップから抜き取り洗浄すること。
  4. オイルを注ぐ時は少し少なめになるように量を調整し、暖気運転後にアッパーレベルに合わせること。

もちろんそれぞれに理由がある。
そんな事をしなくても問題ない、という人もいるだろう。
特にレースをしている人やショップでは、それぞれの持論があるので、意見の違いについて討論するつもりはない。

今まで、一人で年間1,000台近く整備してきて、この方法でオイルを交換してきて、エンジントラブルを起こしたことは一度もない。

ここまで読んで頂いた皆さんは、エンジンオイル交換をメンテナンスの初歩と呼べない事に同意頂けるだろう。


[前のページに戻る]